ルドルフ・シュタイナーが、普遍アントロポゾフィー協会(一般人智学協会)が設立された1923年のクリスマス会議で提示した「会則」は下記の通りです。ここにシュタイナーが構想した「協会」のエッセンスがあるといえます。シュタイナーは、この会則を紹介する際に次のように述べています。

「以下に示すことは、《会則》として提案されていますが、実際には《会則》ではありません。それは純粋に人間的で生命に満ちた社会のあり方の中から生じ得ること、それを描き出したものなのです。」(1923年1月13日付会報)

  1. アントロポゾフィー協会とは、一人ひとりの人間の中の、さらには人間社会における魂の生活を精神的世界の真の認識の基盤の上に育成しようと欲する、そのような人々の集まりを目指すものである。
  2. この協会の基礎をなすのは、1923年のクリスマスの時期にドルナッハのゲーテアヌムに集まった人々である。彼らは個人として、またはグループを代表する形で参加していた。これらの人々は次の見解を共有している。即ち「現在、精神的世界についての真の学問がすでに存在している。これは長年の研究を通して築かれてきたものであり、その重要な部分はすでに公開されている。しかし今日の文明にはそのような学問の育成が欠けている。」という見解である。アントロポゾフィー協会は、この育成をその課題として担うものである。アントロポゾフィー協会は次のようにしてこの課題の達成に努めるであろう。即ち、ドルナッハのゲーテアヌムではアントロポゾフィー的精神科学が育成されており、それは人間の共同生活における友愛のために、また人間存在における道徳的、宗教的生活、さらには芸術的、普遍的・精神的生活のために成果をもたらすものであるが、アントロポゾフィー協会は活動の中心にこの精神科学を置くことによって上記の課題の達成に努めるのである。(原注:このアントロポゾフィー協会は1912年に設立されたアントロポゾフィー協会につながるものであるが、このときに確認された目的のために現代の精神にとって本当にふさわしい形で、新たに独立して出発しようとするものである。)
  3. 協会の基礎としてドルナッハに集まった人々は、設立集会において形成された理事会によって代表されるゲーテアヌム指導部の見解を、次の点に関して同意しつつ承認する。即ち、「ゲーテアヌムで育成されるアントロポゾフィーがもたらす諸成果は、国籍、身分、宗教の違いにかかわらず、全ての人間にとって、精神生活の活性化に役立つものである。これらの諸成果は、真に友愛の上に築かれた社会生活へと導くことができる。こうしたアントロポゾフィーの諸成果を生活の基盤として身につけることは、学問的教養の程度にではなく、捉われのない人間としてのあり方だけにかかっている。しかし、これらの諸成果の研究したり、そうした研究成果を適切に判断するためには、精神科学の習得が必要であり、これは段階を追って獲得されるべきものである。これらの諸成果はその独自のあり方において真の自然科学の諸成果と同様に正確である。もし精神科学の諸成果が自然科学の諸成果と同様に一般の承認を得るようになれば、精神科学の諸成果は生活のあらゆる分野において、即ち精神的分野のみならず、実際的分野においても、自然科学の諸成果と同様の進歩をもたらすであろう。」
  4. アントロポゾフィー協会は秘密結社ではなく、完全に公開された協会である。精神科学のための自由大学としての、ドルナッハにおけるゲーテアヌムがそうであるような、そのような制度の存在の中に何か正当なものをみる人であれば、誰でも、国籍、身分、宗教、学問的ないし芸術的確信に関わらず、この協会の会員になることができる。この協会はいかなる分派的な運動も認めない。政治は、この協会の課題にあるものとはみなさない。
  5. アントロポゾフィー協会は、その活動の一つの中心をドルナッハにおける精神科学自由大学の中にみる。この自由大学は、三つの学級から構成されることになるであろう。協会員は、ゲーテアヌム指導部が定める期間を会員として過ごしたのち、志願した上でこの自由大学に受け入れられる。それによって精神科学自由大学の第一学級に入学することになる。第二学級、第三学級への受け入れは、それを志願するものが、ゲーテアヌム指導部によってそれにふさわしいと認められた場合に叶えられる。
  6. アントロポゾフィー協会のすべての会員は、協会が開催する講演会、上演会、その他すべての集会に理事会によって告知される諸条件のもとに参加する権利を有する。
  7. 精神科学自由大学の設立・編成は、さしあたりルドルフ・シュタイナーの任務である。彼は自分とともに働く者、さらには自分の後継者を任命することになる。
  8. 協会の出版物はすべて公開される。これは他の公共組織の出版物が公開されているのと同様である。この公開性に関しては精神科学自由大学の出版物も例外ではない。しかし同大学の指導部は、予め次の点を主張する。即ち同大学の出版物は、学びの中から生み出されたものであり、したがってそうした著作に関するいかなる判断も同様の学びを踏まえてなされるのでない限り正当とは認められないということである。この意味において同大学指導部は、ふさわしい予備研究によって裏打ちされていない判断を正当とは認めない。それは一般に承認された学問の世界においても通例である。それ故精神科学自由大学の出版物には次の但し書きが添えられることになる。「ゲーテアヌムにおける精神科学自由大学、第〜学級に所属する者のために印刷をもって謄写に代える。同大学が認める予備知識(認識)を、同大学を通して、あるいは同大学がそれと同等と認める仕方で獲得したものでなければ、誰もこれらの著作に対して判断を下す資格があるとは認められない。該当出版物の著者がその著作に関する議論に応じない限り、それ以外の評価は拒否される。」(原注:この学びに至るための諸条件もまた公開されており、今後さらに公開されていくであろう)
  9. アントロポゾフィー協会の目的は、精神的分野における研究の促進(育成)であり、精神科学自由大学の目的は、この研究そのものである。いかなる分野における教条主義も、アントロポゾフィー協会から除外される。
  10. アントロポゾフィー協会は、毎年、ゲーテアヌムで通常年次総会を開催し、そこでは理事会から完全な説明報告が行われる。この総会の議事日程は、すべての協会員への招待状とともに総会の六週間前に理事会によって告知される。臨時総会は、理事会がこれを招集し、その議事日程を定めることができる。理事会は予めその三週間前に協会員へ招待状を送らなければならない。個々の協会員、もしくは協会員によって構成されるグループからの動議は、会議の一週間前に送付されねばならない。
  11. 協会員は、いかなる地域、いかなる専門分野においても、大小のグループを結成することができる。アントロポゾフィー協会の所在地はゲーテアヌムにある。ここから理事会は協会員に対して、また協会員からなるグループに対して、理事会が何をもって協会の課題とみなしているのかを伝えていかなければならない。理事会は、ここのグループによって選出ないし任命された役員たちと交流する。個々のグループは、協会への入会手続きを行う。但し入会確認書は、ドルナッハにおける理事会に提出され、理事会によって、グループ役員への信頼のもとに署名されねばならない。一般に、すべての教会員は一つのグループに所属すべきである。一つのグループへの受け入れが完全に不可能である者に限り、ドルナッハにおいて教会員として受け入れられるべきである。
  12. 会費は、個々のグループがその額を決める。しかし各グループは、その会員1名につき15フランをゲーテアヌムの中央指導部に納めるものとする。
  13. 各活動グループは、それぞれ独自の会則をつくる。但しそれはアントロポゾフィー協会の会則と矛盾するものであってはならない。
  14. 機関紙は週刊『ゲーテアヌム』である。これには機関紙としての目的のために、協会の公的告示を含んだ付録が折り込まれる。この付録付きの『ゲーテアヌム』は、アントロポゾフィー協会の会員だけに送付される。(原注:この会員への通信だけを個別に取り寄せることも、協会員であれば可能である。そのための諸条件は本号の冒頭に記されている。この会則の執行の詳細については、別個の《業務規定》に記されることになる。この《業務規定》は、会員への通信にまもなく掲載されることになるであろう。)

このクリスマス会議の会則、およびシュタイナー自身がアントロポゾフィー協会と精神科学自由大学について述べたことは、たとえば『シュタイナーが協会と自由大学に託したこと』(R.シュタイナー著、入間カイ訳、水声社)http://www.suiseisha.net/blog/?p=3699をご参照ください。